約半世紀に渡り“良質な音への追求”を続け、様々なオーディオ製品を開発してきたオーディオテクニカ(以下、AT)。

ここでは、世界の音楽制作の現場でATの製品がどのように使われているのか、また世界トップクラスのサウンドエンジニアたちがどのような視点で音を創っているのかを紹介していきます。

すでに耳にしたことのある音楽も、その音作りの背景を知ることでいま一度、聴くことへの楽しみにつながるのではないでしょうか。

Janet000-1440x1440 世界で活躍するAT製品ジャネット・ジャクソン“R&B Junkie”編

プロデューサー、キーボード:Jimmy Jam
ヴォーカル、プロデューサー: Janet Jackson
楽曲制作、プロデューサー:Terry Lewis
コーラス:Tony Tolbert
ドラム、パーカッション:|Z
エンジニア:lan Cross
アシスタントエンジニア:Ghian Wright
ミキシング:Serban Ghenea
ミキシングアシスタント:Tim Roberts
Pro-Tools エンジニア:John Hanes
楽曲制作:Janet Jackson, Jimmy Jam, Terry Lewis,
Tony Tolbert, Michael Jones, Nicholas Tervisick

Evelyn “Champagne” Kingの楽曲のサンプリングから生まれた曲

今回のエピソードで紹介する楽曲“R&B Junkie”は、Janet Jackson(以下、Janet)が2004年にリリースした8枚目のアルバム『Damita Jo』に収録されている。同年にシングルカットされ、ビルボードのR&B/ヒップホップカテゴリのランキングで第1位を獲得した楽曲だ。

Evelyn “Champagne” King(以下、Evelyn King)が1981年に発表した楽曲“I’m in Love”をサンプリングしたことでも当時、話題となった。“オールドスクールな気分で一晩中踊りたいの”という歌詞の通り、ダンサブルなディスコソングとなっている。

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共同プロデューサーIZが語る楽曲制作のこだわり

JanetはこのアルバムにJimmy Jam and Terry Lewisを共同制作者として迎え、“R&B Junkie”も彼らと制作している。2人とも、Janetとは長年一緒に仕事をしてきた仲だ。

更に、プロデューサー/ソングライターとして兄弟ユニットで活躍しているAvil Brothers (Bobby Ross Avila &lssiah “IZ” Avila)もアルバム全体の共同プロデューサーとして制作に参加。lssiah “IZ” Avila(別名DJ IZ/以下、IZ)はいくつかの楽曲でベース、エレキギター、スクラッチ等サウンド制作も行った。

“R&B Junkie”ではドラムとパーカッションを担当したIZは、グラミー受賞者でありUsher、Mary J Blige、Chaka Khanといった名だたるアーティスト達とも楽曲を制作してきた。彼はJanetの“R&B Junkie”を作る上での想いを鮮明に覚えていると語る。

「この曲の方向性は、80年代クラシック的な要素がありながらも、 聴く人が”現在”の音楽だって感じれるものにしたかったんだ。スケートボードで滑っている時みたいに、心地良くて踊り出したくなるような音にね。それでEvelyn Kingの“I’m in love”からのサンプリングをベースに曲の青写真を描いてみたんだ。アプローチとしては、サンプリングした昔の音を今の時代の音と融合させること。具体的には、目の前に迫るような力強い低音を響かせてよりアグレッシブにしたり、スネアとざらついた感じのクラップを加えることでグルーヴの中で少し中域を際立たせたり。録ったサンプル自体がすでに、“すぐに踊り出したくなる”ような独自の雰囲気があったから、その躍動感をもっと高めるためにトライアングルやシェイカーのようなパーカッションを加えたりね。ただ、聴いた瞬間に“80年代”だと分かるドラムやベースの時代感をそのまま忠実に残すべきだと思ったから、そこを崩さず”今っぽさ”を色付けしていった感じかな。録音と編集はデジタルでやったんだけど、アナログの持つ暖かさ、生々しさが欲しかった。実際にJanetのくっきりとしたボーカルがすごく良い感じにはまって良かったよ」

“AT812”で録った音を使い、アイデアを思い通りのサウンドに

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IZはスタジオで様々なATのマイクを使用している。

「僕はMPC 3000ドラムマシン(PAD式のビートメイカー)で自分のサンプルを作るのが好きなんだ。そのサンプルとATのマイクを使って、ドラムをはじめ様々な楽器の音を録音したよ。“R&B Junkie”では、ノイズをあまり拾わず、ハウリングも発生しにくい“AT812”(1970年代に発売開始されたダイナミックマイクロフォン)を使って自分の手を叩いて拍手の音をサンプリングした。マイクの前で叩いたり、離れて叩いたりして部屋全体に響く音を取り入れた。そのサンプリング音を重ねて、スネアの音の上にかぶせて味のあるサウンドを作ったんだ。ZappやFunkadelicのようなサウンドを頭に思い描いてね!」

IZは昔からATのヘビーユーザーだと語る。

「音楽制作を始めてからずっと、完璧を求めないようにしているんだ。生楽器の音だけじゃなく、デジタルな音も使うけど、僕はアナログ派だね。そんな僕のためにAT製品は最高のサウンドを提供してくれる。子どもの頃からスタジオで使われているのを見てきたし、ずっと受け継がれてきたものなんだ。クリエイターとしては欠かせない存在だね。ATは、時代を超えたサウンド、革新性、真の音のパイオニア、その全ての象徴なんだ。僕の頭の中にあるアイデアをそのままサウンドにしてくれる」

プロフェッショナルのチームワークが楽曲制作の成功を導く

アルバム制作の過程で起きたアクシデントではこんなエピソードも。

「MPC 3000で最高のパーカッションサウンドをプログラム化した後にエンジニアのlan Cross(以下、lan)と一緒にそのサウンドをPro Toolsに転送したんだ。だけどそこで何らかの問題が起きて、Pro Toolsのドラムの位相を狂わせてしまった。アナログとデジタルの間で通信しようとするとたまに発生する事なんだけど、lanはそれぞれのビートを見事に元どおりに直していったんだ!彼はグルーヴの配置に対して信じられないほど鋭い耳を持っているよ!彼のおかげで何時間もの時間を無駄にしないで滞りなく制作を進めることができたんだ」

最後にIZは、リスナーへ向け自身の想いを語った。

「クリエーター、そしてイノベーターとして僕の目標は限界を超えていくことなんだ。そしてみんなに愛されるような、良い音楽を作ることを常に目指しているよ。リスナーには、音楽からリズムやグルーヴ、そして様々な“音”を感じてほしい。みんなの頭が上下に揺れだすととても嬉しい気持ちになるよ。僕が作る音楽の波動が、聴いている人の心を揺さぶっているのを確信する最高の瞬間だね」